交通事故コラム

解決事例 外貌醜状で訴訟上の和解により約900万円増額した事案

横断歩道 歩行者 交通事故

【事案の概要】

 駅前の横断歩道を歩行中の20代男性がトラックにはねられて,顔面の醜状障害,歯牙障害などを負い,自賠責の後遺障害等級認定で併合12級が認められたものの,相手方保険会社が外貌醜状による後遺障害逸失利益などを認めなかったため,訴訟提起した事案。

【訴訟上の和解による解決】

 訴訟上の和解により,概ね以下の内容で解決しました。
 後遺障害逸失利益 約600万円
 労働能力喪失期間を67歳までの期間とし,労働能力喪失率について当初10年を8%,その後を4%として算定。基礎収入は558万4500円(全年齢平均の賃金センサス)。
 ほかにも,歯牙障害につき,将来のインプラント更新費用として約80万円,将来のインプラントメンテナンス費用として約40万円が認められました。
 また,後遺障害慰謝料として290万円,傷害慰謝料として約230万円が認められました。
 ご依頼時の相手方保険会社提示額が約400万円(既払い除く)に対し、和解による解決額は約1300万円(既払い除く)で、約900万円の増額となりました。
 

【担当弁護士による解説】

外貌醜状による後遺障害逸失利益は認められない?

 外貌醜状の損害を算定するうえで,多くの場合に争いとなるのが,後遺障害逸失利益の問題です。
 一般的に,後遺障害逸失利益とは,事故が無かった場合に想定される利益状態と,事故が起きた場合の利益状態の差額を損害として捉えるものです。
 例えば,事故によって片腕を失った場合,仕事に大きな支障が生じ(労働能力喪失率が高い),将来にわたって事故が起きなければ得られたであろう収入が減少することは明らかあり,その減少分を想定して損害額を算定します。
 これに対して外貌醜状は,いわば見た目の問題に過ぎず,身体機能や能力それ自体は失われていないために,直ちに収入が減少するとまでいえません。
 そのため,裁判所は伝統的に,外貌醜状の逸失利益については否定的であり,ホステス業の女性など外貌が収入に影響すると明らかに認められるような場合に限定して後遺障害逸失利益を認めてきました。
 しかしながら,外貌醜状が将来の収入に全く影響しないとは必ずしもいいきれません。就職の際に,見た目が影響することもないとはいえないでしょうし,なにより,外貌醜状によって被害者の方自身が対人関係や対外的な活動に消極的になってしまうことは十分に考えられるところです。
 裁判例においても,近時,外貌醜状の逸失利益を積極的に肯定しているものが多数出ており,訴訟では,それらの積極的な裁判例を複数挙げて裁判官を説得する必要があります。

外貌醜状について積極的に認めた裁判例

 今回の事案では,次の裁判例が,後遺障害の部位・程度や被害者の属性などの点で類似しており,有用でしたのでご紹介します。

神戸地判令和2年6月11日

 外貌醜状による労働能力の喪失に関する一般論として,「男女の別にかかわらず,外貌がその者に対する印象に影響を与える要素であることは否定できないところであり,醜状の障害は,就労上で一般的に必要な円満な対人関係の構築や円滑な意思疎通の実現を阻害する要因となり得ることもまた否定できない」「外貌醜状による労働能力の喪失については,身体的機能や能力の観点からのみならず,上記のような観点も加味して検討すべきであり,外貌醜状による障害が労働能力に全く影響しない職業は考え難いことからすれば,外貌醜状の状況(部位等)や,職業・職種などを考慮の上,個別具体的に逸失利益の有無やその程度を検討するのが相当である」と判示した裁判例。

横浜地判平成26年1月30日

 介護職に従事する被害者(眉間の部分に人目につく長さ3センチメートル以上の線状痕(12級14号)並びに頸項部痛,胸背部痛及び腰痛(14級9号)の後遺障害)について,67歳までの22年間につき10%の労働能力喪失を認めた裁判例。

インプラント更新費・メンテナンス費用についての裁判例

 また,今回の事案では,事故による歯牙障害について,インプラント治療を行っており,インプラントの耐用年数の問題から,おおよそ20年毎に更新する必要があること,また定期的なメンテナンスの必要もあることから,これらの費用を事故と因果関係のある損害として相手に請求し,裁判所から提示された和解案において損害として認められました。
 参考になる裁判例として,仙台地判平成24年2月28日があります。

結果

 今回の裁判では,外貌醜状の後遺障害による逸失利益の有無が主として争われ,被告側の代理人弁護士から激しい反論が出されましたが,こちらに有利な裁判例を多数挙げると共に,依頼者の外貌醜状による具体的な支障を詳細に主張立証する等して裁判所を説得し,最終的に 労働能力喪失期間を67歳までの期間(約40年間),労働能力喪失率を当初10年は8%,その後は4%とし,基礎収入を558万4500円(全年齢平均の賃金センサス)で算定して,約600万円の後遺障害逸失利益が認められる結果となりました。
 外貌醜状の後遺障害逸失利益は,自賠責で後遺障害等級が認められても,保険会社から被害者の方が納得できる金額が提示されることはほとんどありません。
 外貌醜状の後遺障害でお困りの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めします。