胸腹部臓器の後遺障害

胸腹部臓器の損傷

こんな症状はありませんか?
  • ひどい腹痛がある
  • 吐き気や嘔吐がある
  • 尿漏れや便漏れがある
  • 逆流性食道炎が見られる
  • 軽度の運動でも心臓に負担がかかる

胸腹部臓器の損傷とは

胸腹部臓器の損傷とは、交通事故により胸や腹部の内蔵器に損傷を受けることをいいます。
胸腹部臓器で後遺障害が問題になる臓器は、以下の通りです。

①呼吸器
②循環器
③腹部臓器(食道・胃・小腸・大腸・肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腹壁瘢痕ヘルニアなど)
④泌尿器
⑤生殖器

胸腹部臓器の後遺障害は外見ではわかりにくいため、XP検査、内視鏡検査、消化液検査、尿検査、糞便検査、肝臓・膵臓・腎臓の機能検査、血液検査などで検査します。
内臓器官に障害を負うと、日常生活や就労が困難になり、介護が必要になる場合もあります。
また注意すべき点として、胸腹部臓器の障害は症状固定後に悪化する可能性が高いという点です。
また、治療した後に再発しやすい点も特徴です。

胸腹部臓器の後遺障害と認定される等級

胸腹部臓器損傷における後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 1級2号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2級2号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 3級4号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5級3号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 7級5号
両側の睾丸を失ったもの 7級13号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 9級11号
生殖器に著しい障害を残すもの 9級17号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 11級10号
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 13級11号

胸腹部臓器の後遺障害と等級

呼吸器の後遺障害

呼吸器の後遺障害とは、交通事故により肺を損傷したり胸部を圧迫されるなどで呼吸が困難になり、軽度な運動に支障が出る程度から、
日常生活が困難で介護が必要なほど重度になる場合があります。

①動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果
②スパイロメトリー(呼吸器量の計測検査)の結果及び呼吸困難の程度
③運動負荷試験の結果

によって後遺障害の有無や程度を判断し、後遺障害の等級が認定されます。

動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果
動脈血酸素分圧 呼吸困難の程度 後遺障害等級
50Torr以下 ①呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの 1級
②呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの 2級
①②に該当しないもの 3級
50Torr以下を超えて60Torr以下 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲(37~43Torr)外で、かつ、
呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの
1級
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外で、かつ、
呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの
2級
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外で、かつ、上記に該当しないもの 3級
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内のもの 5級
60Torrを超え70Torr以下 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外のもの 7級
動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内のもの 9級
70Torrを超える 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外のもの 11級
スパイロメトリーの結果及び呼吸困難の程度
動脈血酸素分圧 呼吸困難の程度 後遺障害等級
%1秒量35以下、又は、
%肺活量40以下のもの
①高度の呼吸困難が認められ,かつ,呼吸機能の低下により常時介護が必要なもの 1級
②高度の呼吸困難が認められ,かつ,呼吸機能の低下により随時介護が必要なもの 2級
高度の呼吸困難が認められ,かつ,①②に該当しないもの 3級
中等度の呼吸困難が認められるもの 7級
軽度の呼吸困難が認められるもの 11級
%1秒量35を超え55以下、又は、%肺活量40を超え60以下のもの 高度、又は、中等度の呼吸困難が認められるもの 7級
軽度の呼吸困難が認められるもの 11級
%1秒量55を超え70以下、又は、%肺活量60を超え80以下のもの 高度、又は、中等度の呼吸困難が認められるもの 11級

循環器の後遺障害

循環器の後遺障害とは、交通事故により心臓や血管、リンパ管などの循環器を損傷することで引き起こされる後遺障害をいいます。
循環器の後遺障害は下記の症状が見られる場合に認定されます。

①心機能低下
②除細動器またはペースメーカーを植え込み
③心臓の房室弁または大動脈弁の置き換え
④大動脈解離

心臓機能が低下したもの
障害の状態 後遺障害等級
概ね6METsを超える強度の身体活動が制限されるもの 9級
概ね8METsを超える強度の身体活動が制限されるもの 11級
除細動器又はペースメーカを植え込んだもの
障害の状態 後遺障害等級
除細動器を植え込んだもの 7級
ペースメーカを植え込んだもの 9級
心臓の弁を置換したもの
障害の状態 後遺障害等級
房室弁又は大動脈弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行うもの 9級
房室弁又は大動脈弁を置換し、抗凝血薬療法を行わないもの 11級
大動脈解離を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
大動脈に偽腔開存型の解離を残すもの 11級

腹部臓器の後遺障害

腹部臓器の後遺障害には下記があります。

①食道の障害
②胃の障害
③小腸の障害、④大腸の障害
⑤肝臓の障害、⑥胆のうの障害
⑦すい臓の障害
⑧ひ臓の障害
⑨腹壁瘢痕ヘルニア

①食道の障害
以下のいずれにも該当するものをいいます。

1.通過障害の自覚症状があるもの。
2.消化管造影検査により、食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められるもの。

食道の後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
食道の狭窄による通過障害を残すもの 9級

②胃の障害
交通事故により、胃の一部又は全部を切除した場合は、下表のように等級が認定されます。

胃の後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
消化吸収障害、ダンピング症候群及び胃切除術後逆流性食道炎のいずれもが認められるもの 第7級5号
1.消化吸収障害及びダンピング症候群が認められるもの
2.消化吸収障害及び胃切除術後逆流性食道炎が認められるもの
第9級11号
消化吸収障害、ダンピング症候群又は胃切除術後逆流性食道炎のいずれかが認められるもの 第11級10号
噴門部又は幽門部を含む胃の一部を亡失したもの(9級の11、11級の10に該当しないもの) 第13級11号

1.消化吸収障害
胃の一部又は全部を切除したことにより、食べたものがうまく消化吸収されない状態のことです。
BMIの数値が20以下の場合がこれに該当します。

2.ダンピング症候群
食後30分以内の眩暈や起立不能等の症状、又は食後2時間から3時間後に眩暈、全身の脱力感等の症状がみられます。

3.胃切除術後逆流性食道炎
胃の入り口の部分を切除したことにより、胃液が食道に逆流し、胸やけ、食道の潰瘍やびらん等の症状がみられます。

③④小腸及び大腸の障害
以下のいずれにも該当するものをいいます。

1.通過障害の自覚症状があるもの。
2.消化管造影検査により、食道の狭窄による造影剤のうっ滞が認められるもの。

腸及び大腸を大量に切除したもの
障害の状態 後遺障害等級
残存する空腸及び回腸の長さが100センチメートル以下になったもの 9級
残存する空腸及び回腸の長さが100センチメートルを超え300センチメートル未満となったものであって、
消化吸収障害が認められるもの
11級
大腸のすべてを切除する等、大腸のほとんどを切除したもの 11級
人工肛門を増設したもの
障害の状態 後遺障害等級
小腸又は大腸の内容が漏出することによりストマ(人工排泄口)周辺又は皮膚瘻周辺に著しいびらんを生じ、
パウチ等の装着ができないもの
5級
人工肛門を装着したもののうち、5級に該当するもの以外のもの 7級
小腸又は大腸の皮膚瘻を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
瘻孔から小腸又は大腸の内容の全部又は大部分が漏出するもののうち、
皮膚瘻周辺に漏出による著しいびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの
5級
・瘻孔から小腸又は大腸の内容の全部又は大部分が漏出するもの
・瘻孔から漏出する小腸又は大腸の内容が100ml/日以上のもののうち、
パウチ等による維持管理が困難であるもの
7級
瘻孔から漏出する小腸又は大腸の内容が100ml/日以上のもの 9級
瘻孔から少量ではあるが明らかに小腸又は大腸の内容が漏出する程度のもの 11級
腸又は大腸に狭窄を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
小腸又は大腸に狭窄を残すもの
次のいずれにも該当するもの。
1.1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感、吐き気、嘔吐等の症状が認められるもの
2.単純X線像においてケルクリングひだ像が認められるもの
11級
便秘を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
用手摘便要すると認められるもの 9級
9級に該当しないもの 11級

交通事故に遭う前から便秘の方もいます。
このため、後遺障害等級認定上、便秘とは、次のいずれにも該当する場合に認定されます。
1.排便反射を支配する神経の損傷がMRI画像又はCT画像等により確認できるもの
2.排便回数が週2回以下の頻度であって、恒常的に硬便であるもの

便失禁を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
完全便失禁 7級
常時おむつの装着が必要なもの 9級
常時おむつの装着は必要ないものの、明らかに便失禁があると認められるもの 11級

⑤⑥肝臓及び胆のう

肝臓及び胆のうの後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
肝硬変であり、ウイルスの持続感染が認められ、且つGOT・GPTが持続的に低値であるもの 9級
慢性肝炎であり、ウイルスの持続感染が認められ、且つGOT・GPTが持続的に低値であるもの 11級
胆のうを失ったもの 13級

⑦すい臓

すい臓の後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
外分泌機能の障害と内分泌機能の障害の両方が認められるもの 9級
外分泌機能の障害又は内分泌機能の障害のいずれかが認められるもの 11級

⑧ひ臓

ひ臓の後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
ひ臓を失ったもの 13級

泌尿器の後遺障害

泌尿器の後遺障害には、
①腎臓の障害
②尿管、膀胱および尿道の障害
があります。

①腎臓の後遺障害
腎臓に関する後遺障害等級は、腎臓の亡失の有無及び糸球体濾過値(以下、「GFR」といいます。)
による腎機能の低下の程度により認定されます。

腎臓を失っていないもの
障害の状態 後遺障害等級
GFRが30ml/分超50ml/分以下 第9級11号
GFRが50ml/分超70ml/分以下 第11級10号
GERが70ml/分超90ml/分以下 第13級11号
一側の腎臓を失ったもの
障害の状態 後遺障害等級
GFRが30ml/分超50ml/分以下 第7級5号
GFRが50ml/分超70ml/分以下 第9級11号
GERが70ml/分超90ml/分以下 第11級10号
上記のいずれにも該当しないもの 第13級11号

②尿管・膀胱及び尿道の後遺障害

尿路変向術を行ったもの
障害の状態 後遺障害等級
非尿禁制型尿路変向術を行ったもので、尿が漏出することによりストマ周辺に著しい皮膚のびらんを生じ、
パッド等の装着ができないもの
第5級3号
・非尿禁制型尿路変向術を行ったもので、5級3号に該当しないもの
・禁制型尿リザボアの術式を行ったもの
第7級5号
尿禁制型尿路変向術(禁制型尿リザボア及び外尿道口形成術を除く)を行ったもの 第9級11号
・外尿道口形成術を行ったもの
・尿道カテーテルを留置したもの
第11級10号
排尿障害を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
膀胱の機能障害により残尿が100ml以上であるもの 第9級11号
・膀胱の機能障害により残尿が50ml以上100ml未満であるもの
・尿道狭さくにより糸状ブジーが必要なもの
第11級10号
尿道狭さくによりシャリエ式尿道ブジー第20番が辛うじて通り、時々拡張術が必要なもの 第14級相当
畜尿障害を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
・持続性尿失禁を残すもの
・切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁により、終日パッド等を装着し、
かつ、パッドをしばしば交換しなければならないもの
第7級5号
切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁により、常時パッド等を装着しなければいけないが、
パッドの交換までは必要でないもの
第9級11号
・切迫性尿失禁又は腹圧性尿失禁により、常時パッド等の装着は必要ないが、下着が少し濡れるもの
・頻尿を残すもの
第11級10号

頻尿とは、以下のいずれにも該当するものをいいます。
1.器質性病変による膀胱容量の器質的な減少又は膀胱若しくは尿道の支配神経の損傷が認められる
2.日中8回以上の排尿が認められる
3.多飲等の他の原因が認められない

生殖器の後遺障害

生殖機能を完全に喪失したもの
性別 障害の状態 後遺障害等級
男性 ・両睾丸を失ったもの
・常態として精液中に精子が存在しないもの
第7級5号
女性 ・両側の卵巣を失ったもの
・常態として卵子が形成されないもの
生殖機能に著しい障害を残すもの
性別 障害の状態 後遺障害等級
男性 ・陰茎の大部分を欠損したもの(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限ります。)
・勃起障害を残すもの
以下のいずれにも該当するもの。
①夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことが
リジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
②支配神経の損傷等勃起障害の原因となり得る所見が、
会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌス・自律収縮、
肛門反射及び球海綿反射筋反射の検査、
プロスタグランジンE1海綿体注射による各種検査のいずれかで認められること
・射精障害を残すもの
以下のいずれにも該当するもの
①尿道又は射精管が断裂
②両側の下腹神経断裂による神経機能の喪失
③膀胱頚部の機能喪失
第7級5号
女性 ・膣口狭さくを残すもの(陰茎を膣に挿入することができないと認められるものに限ります)
・両側の卵管に閉塞若しくは癒着を残すもの、頸管に閉塞を残すもの又は子宮を失ったもの
(画像所見により認められるものに限ります。)

生殖機能は残存するものの、通常の性交では生殖できない場合が該当します。

生殖機能に障害を残すもの
障害の状態 後遺障害等級
狭骨盤又は比較的狭骨盤(産科的真結合線が10.5cm未満又は入口部横径が11.5cm未満)が認められるもの 第11級10号

通常の性交で生殖を行うことは出来るものの、生殖機能に一定以上の障害を残す場合が該当します。

生殖機能に軽微な障害を残すもの
性別 障害の状態 後遺障害等級
男性 一側の睾丸を失ったもの(準ずべき程度の萎縮を含みます。) 第13級11号
女性 一側の卵巣を失ったもの

通常の性交で生殖を行うことは出来るものの、生殖機能に僅かな障害を残す場合

解決事例

逸失利益が認められ、大幅な増額につながり、約1200万円の増額に成功

愛知県在住 男性 (30代)

最終示談金

約1800万円

受傷部位

右肘、鎖骨(右肘頭骨骨折、右鎖骨骨折)

等級

併合11級

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