上肢・手指の後遺障害

上肢・手指の損傷

こんな症状はありませんか?
  • 肩が上がらなくなり、可動域が狭くなった
  • 腕が曲げにくい
  • 小さなものがつまみにくい
  • 指先にしびれがある
  • 雑巾を絞る動作がつらい

上肢・手指の損傷とは

上肢とは鎖骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨から形成されている人間の腕や肩のことを言います。
交通事故によって上肢や手指の骨を骨折したり、関節を脱臼したりして、治療を続けたにも関わらず関節の動きが悪くなったり、
骨に変形が残ったり、あるいは切断で失ってしまった場合、後遺障害の対象となります。
また、上肢を損傷することにより神経が圧迫されたり傷つけられた場合に痛みやしびれといった
神経症状が現れる場合があります。この場合も後遺障害の対象になります。

上肢及び手指損傷における等級

上肢の後遺障害と等級

上肢の後遺障害には欠損障害、機能障害、変形障害の3種類があり、それぞれ等級が設けられています。

欠損障害

欠損障害とは、交通事故によって上肢(肩から手まで)の一定部分を失ったことに関する後遺障害をいい、下記のように分類されます。

欠損障害での後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
両上肢をひじ関節以上で失ったもの 1級3号
両上肢を手関節以上で失ったもの 2級3号
1上肢をひじ関節以上で失ったもの 4級4号
1上肢を手関節以上で失ったもの 5級4号
上肢をひじ関節以上で失ったもの
①肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
②肩関節とひじ関節の間で上肢を切断したもの
③ひじ関節で上腕骨と橈骨及び尺骨が離断したもの
上肢を手関節以上で失ったもの
①ひじ関節と手関節の間で上肢を切断したもの
②手関節で橈骨及び尺骨と手根骨が離断したもの
認定のポイント

上肢の欠損に関しては、離断、切断に関して客観的な基準が定められているため、等級自体の争いはそれほどありません。

裁判での主張・立証のポイント

上肢の欠損については、1級から5級という高い等級が自賠責上認定されるため、自賠責上の労働能力喪失率は高くなっています。しかし、上肢の欠損の場合には下肢と異なり、自賠責の労働能力喪失率と同程度の減収が生じていない場合も見受けられます。それでも裁判上は、現実の減収割合にとらわれることなく、今後のさらなる減収の可能性、職を失う可能性、再就職の際の制約等を考慮し、労働能力喪失率を認定しているものが多く、その点の主張・立証が重要になります。

機能障害

機能障害での後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
両上肢の用を全廃したもの 1級4号
1上肢の用を全廃したもの 5級6号
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 6級6号
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 8級6号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 10級10号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 12級6号

上肢の機能障害とは、
「上肢の用を全廃したもの」「関節の用を廃したもの」「関節の機能に著しい障害を残すもの」「関節の機能に障害を残すもの」
をいいます。

上肢の用を廃したもの
肩・ひじ・手の上肢三大関節の全てが強直し、かつ、手指が欠損や骨の固定、神経症状などにより全機能が失われた状態を言います。
関節の用を廃したもの
①関節が強直してしまった場合(関節が完全に動かない、もしくはこれに近い状態)、
②関節の完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にある場合、
③人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、可動域が健側(正常な側)の可動域角度の2分の1以下に制限されている場合を言います。
関節の機能に著しい障害を残すもの
①関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているもの
②人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節であって、可動域が健側(正常な側)の可動域角度の2分の1以下に制限されていない場合を言います。
関節機能に障害を残すもの
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものを言います。
認定のポイント

関節の可動域制限は、その可動域角度の違いが大きく等級に影響を及ぼします。その認定にあたっては当然、後遺障害診断書記載の可動域角度が重要になるため、参考可動域も念頭におきつつ、正しい検査がなされるよう注意が必要です。
また、機能障害が認定されるためには、原則として器質的損傷が必要とされます。関節部分の骨折後の癒合不良、関節周辺組織の変性による関節拘縮、神経の損傷などの器質的損傷がない限り、将来にわたり障害が残存するとは考えられないためであり、動きが制限される原因を明確にしておくことが重要です。

裁判での主張・立証のポイント

上肢の全廃になれば、それが1上肢であっても日常生活に不自由をきたすことが多く、裁判上も、そのために必要な自宅改造等の損害項目が認められることがあります。
労働能力喪失率については、上肢の欠損と同様、上肢の機能障害においても、比較的重い等級の場合、自賠責上の労働能力喪失率と同程度の減収が生じていない場合があり、その場合には、裁判上も労働能力喪失率が低くなる場合があります。しかし、10級以下の機能障害の場合には、将来の就労に与える影響等を斟酌し、裁判上も自賠責上の労働能力喪失率と同じ喪失率を認定する場合が多く、それ以上の減収が生じ、現実の就労に与える影響等が明らかな場合には、その点を主張・立証し、より高い喪失率が認定されることもあります。
また、機能障害の等級認定においては、自賠責の判断と同様、裁判上もその原因が器質的なものであることの立証が重要です。もっとも器質的損傷が明確でない場合にも、裁判上、神経症状等で後遺障害が認められる場合があり、その治療経過を主張・立証することは重要です。

変形障害

変形障害での後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 7級9号
1上肢に偽関節を残すもの 8級8号
長管骨に変形を残すもの 12級8号

変形障害とは、骨折後、治療したにもかかわらず、骨がうまく癒着せず、関節ではないところで曲がったり、骨の結合が途中で止まってしまう
「偽関節を残すもの」又は「長管骨にゆ合不全を残すもの」をいい、下記のように分類されます。

①偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。
(ア)上腕骨の骨幹部又は骨幹端部(以下「骨幹部等」といいます。)にゆ合不全を残すもの
(イ)橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すもの
②偽関節を残すもの
次のいずれかに該当するものをいいます。
(ア)上腕骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記①(ア)以外のもの
(イ)橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、上記①(イ)以外のもの
(ウ)橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの
③上肢の「長管骨に変形を残すもの」
次のいずれかに該当するものをいいます。
なお、同一の長管骨に以下(ア)から(カ)の障害を複数残す場合でも、12級8号と認定します。
(ア)次のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正ゆ合したもの)以上のもの
a)上腕骨に変形を残すもの
b)橈骨及び尺骨の両方に変形を残すもの(ただし、橈骨又は尺骨のいずれか一方のみの変形であっても、その程度が著しいものはこれに該当します。)
(イ)上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部にゆ合不全を残すもの
(ウ)橈骨又は尺骨の骨幹部等にゆ合不全を残すもので、硬性補装具を必要としないもの
(エ)上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの
(オ)上腕骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に、又は橈骨若しくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が2分の1以下に減少したもの
(カ)上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形ゆ合しているもの
この場合、50度以上回旋変形ゆ合していることは、次のいずれにも該当することを確認することによって判定すること。
a)外旋変形ゆ合にあっては肩関節の内旋が50度を超えて可動できないこと、また、内旋変形ゆ合にあっては肩関節の外旋が10度を超えて可動できないこと
b )エックス線写真等により、上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形ゆ合が明らかに認められること
なお、長管骨の骨折部が良方向に短縮なくゆ着している場合は、たとえ、その部位に肥厚が生じていても長官骨に変形としては取り扱わないこと
裁判での主張・立証のポイント

上肢の変形障害は、下肢の変形障害に比較すると実際の労働能力に与える影響が低い場合が多く、労働能力喪失率の判断にあたっては、現実の減収の有無、減収がない場合には減収を防ぐための原告の努力や周囲の協力等の内容も重要になるため、その点の主張・立証が必要です。

手指の後遺障害と等級

欠損障害

人間の手は、親指(指骨2本)とその4本の指(指骨3本)と、5本の指
それぞれにある中手骨で構成されています。
手指の欠損障害には、「手指を失ったもの」と「指骨の一部を失った
もの」とがあります。

欠損障害での後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
両手の手指の全部を失ったもの 3級5号
1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの 6級8号
1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの 7級6号
1手におや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3つの手指を失ったもの 8級3号
1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの 9級12号
1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの 11級8号
1手のこ指を失ったもの 12級9号
1手のおや指の指骨の一部を失ったもの 13級7号
1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 14級6号

機能障害

手指の機能障害とは、「手指の用を廃したもの」と「おや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」があります。

機能障害での後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
両手の手指の全部の用を廃したもの 4級6号
1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの 7級7号
1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの 8級4号
1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの 9級13号
1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの 10級7号
1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 12級10号
1手のこ指の用を廃したもの 13級6号
1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節(DIP)を屈伸することができなくなったもの 14級7号
手指の用を廃したもの
①「手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、又は中手指節関節(MP)若しくは近位指節間関節(PIP)(母指にあっては指節間関節(IP)に著しい運動障害を残すもの」とされており、具体的には、次の場合がこれに該当するものであること。
ア)手指の末節骨の長さの2分の1以上を失ったもの
イ)中手指節関節又は近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されるもの
ウ)母指については、橈側回転又は掌側外転のいずれかが健側の2分の1以下に制限されているものも、「著しい運動障害を残すもの」に準じて取り扱うこと。
エ)手指の末節の指腹部及び側側の深部感覚及び表在感覚が完全に脱失したものも、「手指の用を廃したもの」に準じて取り扱うこと。
このことは、医学的に当該部位を支配する感覚神経が断裂し得ると判断される外相を負った事実を確認するとともに、筋電計を用いた感覚神経伝達速度検査を行い、感覚神経活動電位(SNAP)が検出されないことを確認することによって認定すること。
表在感覚のみならず、深部感覚をも完全に脱失するのは、外傷により感覚神経が断裂した場合に限られる。
②「遠位指節間関節(DIP)を屈伸することができないもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
ア)遠位指節間関節が強直したもの
イ)屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないもの又はこれに近い状態にあるもの
認定のポイント

手指に機能障害が認められるためには、肩・肘・手関節の機能障害と同様、可動域制限の原因が器質性のものであることが必要です。

裁判での主張・立証のポイント

手指の障害は、後遺障害等級自体が争いになる事例はありませんが、労働能力喪失率は争いになりやすいです。もっとも、手指の障害は、仕事にどのような影響があるのかについての主張・立証は比較的容易であり、その点を詳細に明らかにすることにより、現実の減収割合以上の喪失率の認定につながるものと思われます。
また、器質的損傷が明らかでない場合には、裁判上も原則として機能障害の後遺症は認められにくいものと思われますが、現在の状況と治療経過等を詳細に立証することにより、後遺障害による損害がみとめられる可能性もあります。

TFCC損傷の後遺障害

TFCCとは三角線維軟骨複合体という名称の手首の部位のことであり、
腕の骨(尺骨や橈骨)と手指の骨(手根骨)の間の小指側にある三角の形状をした組織のことを言います。
手首をなめらかに動かすことができるのは、このTFCCが手首の骨を支えて、衝撃を吸収しているためです。
交通事故によって転倒し、地面に手を強く打ち付けてしまったときのように手首に強い衝撃が加わった時、このTFCCが損傷し、後遺障害が残る場合があります。
TFCCの損傷はレントゲンでは判断できないため、MRI検査や関節鏡検査などにより損傷を有無を医師に確認してもらう必要があります。
痛みなどの症状がある場合は、必ず医師の診断を受け、しっかりと検査した上で診断書を作成してもらいましょう。

TFCCにおける後遺障害等級

TFCCの後遺障害の症状としては、手首の小指側あたりに痛みを感じたり、腫れがあったり、捻る動作がしづらいなどが見られます。
手首の捻挫と診断された場合でも、痛みが慢性的に続いているようであれば、専門医を受診し、MRIなどの精密検査を受けましょう。

TFCCにおける後遺障害等級認定基準
障害の状態 後遺障害等級
1上肢の3大関節中の1関節の用を 廃したもの 8級6号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に 著しい障害を残すもの 10級10号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に 障害を残すもの 12級6号
局部に頑固な神経症状を残すもの 12級13号
1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの 10級7号
1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 12級10号
1手のこ指の用を廃したもの 13級6号
1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節(DIP)を屈伸することができなくなったもの 14級7号

後遺障害等級の認定を受けるためのポイント

認定のポイント
  • 上肢の欠損・変形及び手指の障害に関しては、客観的な基準が定められており、等級自体の争いはそれほどありませんが、下肢の障害と比べると、減収の幅が少ないこともあるので、現実の減収割合にとらわれることなく、今後のさらなる減収の可能性や職を失う可能性、本人の努力や職場のサポート等を主張・立証していくことが重要です。
  • 上肢の機能障害において、可動域が争いとなることが多いです。後遺障害診断書記載の可動域角度が重要になるため、参考可動域も念頭におきつつ、正しい検査がなされるよう注意が必要です。

解決事例

逸失利益が認められ、大幅な増額につながり、約1200万円の増額に成功

愛知県在住 男性 (30代)

最終示談金

1950万円

受傷部位

右肘、鎖骨(右肘頭骨骨折、右鎖骨骨折)

等級

併合11級

慰謝料と逸失利益に納得できず相談。弁護士の介入により、790万円の増額に成功

愛知県 男性 (20代)

最終示談金

約1120万円

受傷部位

左腕(左上腕骨骨幹部骨折等)

等級

14級

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