脊髄・体幹の後遺障害

脊髄・体幹の損傷

こんな症状はありませんか?
  • 指先の感覚がない
  • 重たいものが持てなくなった
  • 文字を書くことができない
  • 歩く速度が遅く、転倒しやすい

脊髄・体幹の損傷とは

脊髄損傷とは、脊柱の中にある中枢神経を交通事故などによって損傷したために、手足に麻痺などの症状が現れること障害をいいます。
中枢神経は末梢神経とは異なり、一度傷つくと治らないため、障害が残ると回復が困難で、損傷した箇所以下の神経領域に麻痺などの症状を残すことになります。

腰痛の原因
完全損傷
損傷した部分より下の運動機能と知覚機能が完全に麻痺している状態。
腰部を損傷した場合、両足を一切自力で動かせないだけでなく、触られても何も感じない状態。
不全損傷
損傷した部分より下の運動機能と知覚機能が部分的に麻痺している状態。
症状も麻痺の範囲や強弱が部分によって異なります。
脊髄損傷の部位による分類

四肢麻痺

両上肢(両腕)両下肢および骨盤や臓器に麻痺が残る状態

対麻痺

胸髄、腰髄、仙髄、馬尾の損傷により、両下肢及び骨盤臓器に麻痺などの機能障害を残す状態

片麻痺

脊髄を損傷したことにより、身体の片側(左右どちらか一方)の上肢および下肢に麻痺が残る状態

単麻痺

脊髄を損傷したことにより、上肢または下肢の1ヶ所に麻痺や機能障害を残すこと

脊髄損傷における等級

等級
後遺障害の内容
保険金額
(自賠責保険)
別表第1
第1級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するものであり、以下のものが該当する。

①高度の四肢麻痺が認められるもの
②高度の対麻痺が認められるもの
③中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について 常時介護を要するもの
④中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について 常時介護を要するもの

4000万円
別表第1
第2級1号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するものであり、以下のものが該当する。

①中等度の四肢麻痺が認められるもの
②軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
③中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの

3000万円
別表第2
第3級3号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないものであり、以下のものが該当する。

①軽度の四肢麻痺が認められるもの(上記「第2級1号」の②に該当するものを除く)
②中等度の対麻痺が認められるもの(上記「第1級1号」の④又は「第2級1号」の③に該当するものを除く)

2219万円
別表第2
第5級2号

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないものであり、以下のものが該当する。

①軽度の対麻痺が認められるもの
②一下肢の高度の単麻痺が認められるもの

1574万円
別表第2
第7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
せき髄症状のため、簡易な労務以外には服することができないもの」であり、一下肢の中等度の単麻痺が認められるものが該当する。

1051万円
別表第2
第9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものをいい、一下肢の軽度の単麻痺が認められるものが該当する。

616万円
別表第2
第12級13号

通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため多少の障害を残すもの

①運動性、支持性、巧緻性及び速度について支障がほとんど認められない程度の軽微な 麻痺を残すもの
②運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの

が該当する

224万円
脊髄損傷による労働能力喪失率についての考え方

脊髄損傷による障害の程度(後遺障害等級)は、(脊髄損傷に基づく)諸症状がその日常生活及び労働に及ぼす影響の程度を総合して評価されるべきと考えられます。既に説明した脊髄損傷に関連する各等級については、それぞれ参考となる労働能力喪失率が定められていますが、この喪失率は、文字通りあくまでも「参考」に過ぎず、個別具体的な事案における労働能力喪失率は、後遺症を負った者の現実の症状や、同人をとりまく環境などを踏まえ、修正されることもあります。

脊髄損傷の存否に関する裁判例

<脊髄損傷の存否が問題となる場合>
脊椎を骨折した場合など、脊髄を損傷したことが画像からも明らかである場合や、事故直後から四肢麻痺といった症状が生じ、その麻痺の箇所も脊髄の損傷箇所と対応するなど、神経学的所見からも脊髄の損傷が明らかであるというような場合には、脊髄損傷の存在及び当該事故と後遺障害との因果関係が認められることに争いは少ないものと思われます。
しかし、画像上脊椎の骨折・脱臼といった骨傷が明らかでなく、脊髄損傷の所見も明らかでない場合には、脊髄損傷の存否から争いになることが多いです。
このような脊髄損傷の存否が問題となる場合、①当該事故の態様が脊髄を損傷する程度のものかどうか、②実際の症状が、通常脊髄損傷により生じうる症状と同様かどうか(症状の内容や麻痺の範囲の相違、症状の遅発・悪化等)③既往症が存在する場合にその内容(既往症と相俟って脊髄損傷が生じたと認められる場合や、逆に、痺れ等の症状は事故を原因とした既往症の悪化による神経症状であるとして、脊髄損傷は生じていないと判断されつつも、事故と後遺障害自体との因果関係が認められる場合があります)等が判断の要素となることが多いです。

後遺障害等級の認定を受けるためのポイント

画像所見

脊髄の損傷が疑われる場合には、交通事故直後の早い段階から解像度の高いMRIによる撮影と画像所見を得ることが大切です。

神経学的検査

画像による診断に加え、触診や問診により知覚障害(違和感・しびれ感)を検査したり、力の入り具合を検査したり、
腱反射の検査(ハンマーで神経を叩いて、自分の意思とは関係なく反射的に筋が収縮するかを確かめる検査)をしたりして、
脊髄の損傷による症状の程度を確認します。
それにより、麻痺、痛み、痺れといった自覚症状も他覚症状として神経学的な所見として裏付けることができます。

電気生物学的検査

筋電図や、脳・脊髄誘発電位という検査手法を用いて、神経の伝達に障害が発生しているか否かを診断することあります。