交通事故コラム

過失割合 裁判例紹介 車線変更時の事故 (100対0)

交通事故 裁判例 過失割合 車線変更 100 0

〈事案の概要〉

事故状況

 交差点手前での車線変更時の衝突事故

事故現場

 片側4車線の道路、信号機の設置された十字路交差点手前

車両の動き

 X車は、第3車線(直進車線)を走行して、交差点の手前で、対面信号が赤色であったことから、第3車線の先頭の停止車両から数台後方の位置で停止していた。X車が停車中、反対車線の路外のガソリンスタンドから出て右折し、反対車線をまたいで、X車側の道路の第4車線(右折専用車線)に進入した。第4車線でY車の前には、赤信号で停車中の車両があった。Y車は交差点を直進するため第3車線に車線変更しようとしていた。X車が、対面信号が青色になったことから直進しようとして発進したところ、第4車線から第3車線に車線変更してきたY車両の左前部とX車両の右側面が衝突した。

〈裁判所の判断〉 東京地判平成23年11月21日

結論

 過失割合 X0 Y100

理由

Yの過失100
 Yは、第3車線に車線変更するに当たって、第3車線を走行する車両の動静を確認し、第3車線の走行車両と接触しないように走行する注意義務があるのに、これを怠り、第3車線の走行車両の動静を確認せず車線変更し、第3車線を走行していたX車にY車を衝突させた過失がある。
Xの過失0
 Xは、衝突までY車の存在を認識していなかった(事故態様及びXの証言から認定)。また、X車が、第3車線への車線変更を行っていたY車と並走していたか、その前方を走行していたことから、XがY車の車線変更を予測することができたと認定することもできない。従って、Xに過失相殺をすべき落ち度は認められないというべき。

〈弁護士による解説〉

 道路交通法では、車両はみだりにその進路を変更してはならず(法26条の2第1項)、また、車両は進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等の速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない(同条2項)とされています。
 今回のケースでは、Y車両が車線変更にあたって、変更先の車線を走行する車の動きを十分に確認せずに車線変更した結果起きた事故であり、Yの明らかな過失がある一方で、Xからすれば、急に右(ないし右後方)を走っていた車が前に割り込んできていることから、どうにも避けようがない事故であるといえます。裁判所がXの過失なしと判断したのは妥当な結論といえるでしょう。