自賠責保険で高次脳機能障害の等級認定を受けるために必要な資料はなに?
〈質問〉自賠責保険の高次脳機能障害認定に必要な書類や資料は?
高次脳機能障害について、自賠責保険の後遺障害等級認定を受けるにあたって、どのような資料や書類を揃える必要がありますか?
〈回答〉CT・MRI画像、医師作成の意見書、日常生活状況の報告書など
高次脳機能障害で自賠責保険の等級認定を受けるにあたっては、次のような書類や資料の提出が求められます。
〇CTやMRIの画像
〇医師作成の書類
(頭部外傷後の意識障害についての所見、神経系統の障害に関する医学的意見)
〇日常生活状況報告
〈弁護士による解説〉
提出を求められる資料・文書
自賠責保険に対して、高次脳機能障害を理由に後遺障害等級認定手続の申請をすると、損害保険料算出機構の調査事務所から、次の書類を提出するように求められます。
⑴ CTやMRIの脳画像の検査記録
脳の損傷を診断するための画像診断法としては、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像診断装置)が使用されることが一般的です。
事故直後の画像検査はCTで行うことが多く、状況や必要に応じて適宜MRIを使用して検査されているようです。
CTやMRIの画像は脳の損傷状況を客観的に示す極めて重要な資料であることから、提出が求められます。
⑵ 頭部外傷後の意識障害についての所見
意識障害について医師が作成する文書で、事故後の意識障害の有無・推移(意識レベルの推移はJCSやGCSの数値で表示)、外傷後健忘(PTA)の有無・長さ、そのほか意識障害の所見について特記すべき事項が詳細に記載されます。
自賠責保険が作成した定型の書式があり、医師に作成を依頼します。
⑶ 神経系統の障害に関する医学的意見
認知障害、人格変化、問題行動などについて医師が作成する文書です。画像(脳MRI、脳CTなど)および脳波、神経心理学的検査、運動機能、身の回り動作能力、てんかん発作の有無、認知・情緒・行動障害、その症状が社会生活・日常生活に与える影響、全般的活動および適応状況といった事項が詳細に記載されます。
自賠責保険が作成した定型の書式があり、医師に作成を依頼します。
⑷ 日常生活状況報告
被害者の日常生活の状況について被害者の家族などが作成する文書です。①受傷前後の日常活動の能力程度(起床・就寝時間を守れるか、日課にしたがった行動をしているかなど)、②問題行動の頻度(顕著な子どもっぽさ、年齢にそぐわない甘えや依存があるかなど)、③家族・地域社会・職場・学校などにおける日常の活動状況や適応状況、④①~③の症状状態が社会生活・日常生活に与える影響、事故前後の生活状況の変化、現在支障が生じていること、④就労・就学状況、⑤身の回り動作能力、⑥⑤に基づき、声かけ、見守り、介助が必要な理由、それらの内容、頻度を詳細に記載します。
自賠責保険が作成した定型の書式があり、被害者の日常生活の状況を把握している家族などが作成します。
文書作成のポイント
自賠責保険は、上記の提出された文書に記載された内容を勘案して、被害者が訴える高次脳機能障害が後遺障害等級に該当するかの認定を行っています。
そのため、被害者の家族が上記「日常生活状況報告」を作成するにあたっては、被害者の意識が回復してから症状が固定するまでの間の詳細な生活状況を記載し、障害の程度や症状の経過を示す必要があります。
また、自賠責保険の定型の書式に記載された質問項目にとどまらずに、被害者の生活状況を詳細に記載した報告書や陳述書を添付して提出するなど工夫することが重要です。
被害者本人の日々の言動や1日の過ごし方、被害者が学生の場合には学校での過ごし方(受傷前後の担任の教師に学校生活の状況報告書の作成を依頼する方法も有効です)、被害者が就労している場合には勤務状況や職場での問題発生の有無・内容等を具体的に記載するとよいでしょう。
医師に作成を依頼する「神経系統の障害に関する医学的意見」についても、医師は診察室で限られた時間しか被害者と接しておらず、被害者の生活状況すべてを医師が把握することは困難ですから、家族が診察に同席するなどして、医師に被害者の生活状況を詳細に伝えて、「神経系統の障害に関する医学的意見」の書面にできるかぎり詳細な内容を記載してもらうようにお願いすることが重要です。
まとめ
高次脳機能障害の後遺障害等級認定を受けるにあたっては、CT・MRI画像や医師が作成する書類の他に、被害者の生活状況等を詳細に記載した書類の提出が求められており、認定に極めて重要な役割を果たしています。
適切な後遺障害等級認定を受けるためには、ご家族の方が、事故後から症状固定までの間、できるかぎり被害者の方の生活状況を詳細に記録したうえで、書面にまとめて調査事務所に提出することが重要です。
交通事故による高次脳機能障害などの後遺障害でお困りの方は一度弁護士にご相談ください。