交通事故コラム

自転車と自動車の接触事故!で自転車事故の過失割合や賠償はどうなる?

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〈質問〉自転車事故の被害者となったときの賠償は?

 先日、名古屋の街中で歩道を歩いていたところ、自転車とぶつかり、地面に倒れて腰の骨を折るけがを負いました。事故の相手は大学生でお金をあまり持っていないようで、治療費などの支払いを受けられるのか不安です。自転車事故の被害にあったときはどうすればよいでしょうか?

〈回答〉慰謝料や治療費は加害者に請求。加害者が自転車保険に加入しているか確認。

 自転車は自動車と異なり、自賠責保険の加入義務がなく、また自賠責保険に未加入の車との事故で被害を受けた場合に自賠責保険と同程度の補償が受けられる政府保障事業も対象外とされています。
 従って、自転車の運転者が自転車保険などの任意保険に加入しているかを確認する必要があります。また、ご自身の保険に自転車傷害特約が付されていれば、入院費用などの補填を受けることができます。

〈弁護士による解説〉

 最近、ウーバーイーツ(Uber Eats)などの街中で食事を宅配する業者さんの自転車をよく見かけます。また、ロードバイクを題材にした映画も話題です。健康志向の高まりもあって、自転車通勤をされている方も多いのではないでしょうか?
 皆さんが普段何気なく利用されている自転車ですが、自転車による事故のニュースも多く耳にするところです。
 そこで今回は、自転車の運転に関する法的規制と保険制度についてご説明します。

自転車は自動車と原則同じ扱いを受けます

 自転車は、道路交通法で「軽車両」にあたるとされており(道路交通法2条1項11号)、自動車や原動機付自転車、トロリーバスと共に「車両」として扱われています(同法2条1項8号)。
 従って、自転車は原則として自動車と同様の法的規制を受けることになります。
 例えば、歩道や路側帯と車道が区別されている道路においては、自転車は自動車と同じ扱いを受けますので、原則として車道を通行しなければなりません(同法17条1項)し、道路の中央から左の部分を通行しなければなりません(同法17条4項)。
 自転車道が設けられている道路では、自転車道以外の車道を横断する場合や道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除いて、自転車道を通行しなければならないとされています(同法63条の3)。
 自転車が歩道を通行することができる場合は、次の場合に限られています(同法63条の4第1項)
  〇道路標識等で通行が認められている場合
  〇運転者が、児童、幼児、70歳以上の高齢者などの、自転車を運転して車道を通行することが危険と認められるものとして政令で定める者の場合
  〇車道や交通の状況に照らして、自転車の通行の安全を確保するために、歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合

自転車の過失割合の問題

 自転車は自動車と原則同じ法的規制を受けることから、自転車で事故を起こした場合は、自動車と同様にその過失を問われることになります(信号無視や前方不注意など)。
 もっとも、自転車は自動車と異なり、歩道を通行できる場合がありますし、運転に免許が不要で交通ルールをよく知らない子どもも運転できること、また通常自動車より速度が遅いことなど、自動車との違いも多くあることから、単純に自転車の事故を自動車の事故と同じように扱うことは適切ではありません。
 そこで、自転車の過失割合(どちらの責任が重いか)について、自転車は自動車と異なる取り扱いを受けることに注意が必要です。イメージとしては、自転車は歩行者よりは不利に扱われますが、自動車や単車よりは有利に扱われることが一般的です。
 自転車事故の過失割合で疑問をお持ちの方は弁護士にご相談ください。

自転車事故の損害賠償の問題(自賠責や政府保障事業の対象外)

 自転車事故の加害者は被害者に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負います。近時ニュースでも自転車事故の損害賠償額につき裁判で1億円近い金額が認められたケースが取り上げられていましたが、事故の加害者は自動車事故とそん色ない賠償額を支払わなければならない可能性が十分にあります。
 しかし、それほどの賠償金を個人で支払える方はそう多くはないでしょう。
 この点、自動車事故については、交通事故の被害者を救済する観点から、国の制度として、自賠責保険への加入が義務付けられており、また未加入の場合でも政府保障事業によって自賠責保険と同程度の補償が受けられることから、被害者の方は一定の範囲で損害を補填することができます。
 これに対して、自転車事故の場合は、自転車に自賠責保険への加入義務がなく、また政府保障事業の対象外とされていることから、国の制度による救済がありません。
 従って、自転車事故の加害者が無保険の場合、加害者の資力の範囲内でしか損害の補填を受けることができません。
 自転車事故で被害を受けた方は、まず相手の自転車が任意保険に加入しているかを確認する必要があります。
 被害者の方の保険に自転車傷害特約が付いていれば、その保険を使って損害の補填を受けることができます。

名古屋市は条例で自転車損害賠償保険等への加入が義務化されました

 近時、地方自治体において、自転車を利用する方に自転車損害賠償保険等の任意保険への加入を義務化する条例を制定する動きが高まっています。
 名古屋市では、平成29年10月1日から自転車を利用する方に自転車損害賠償保険等への加入が義務付けられました(名古屋市自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例第14条)。
 なお、この義務に違反した場合の罰則はありません。

まとめ

 自転車の運転に免許は必要ありませんが、事故が起きた際には自動車とそん色ない責任を負いますので、自転車を利用される方は必ず任意保険に入るようにしてください。ご自身だけでなく被害を受けた方の助けにもつながります。
 事故に遭われて治療費などの請求でお困りの方は、一度弁護士にご相談ください。