判例紹介(過失割合) 住宅街の道路を歩行中の子供に路外駐車場から出た車が衝突した人身事故
監修:弁護士 森戸尉之( 弁護士への相談はこちら ☞ お問い合わせ・無料相談予約 )
福岡地判平成12年3月29日
歩車道の区別のない住宅街の道路を歩行中の子供に、路外駐車場から出てきたY車が衝突した事故について、過失割合を判断した裁判例をご紹介します。
事故態様
歩車道の区別のない住宅街の道路において、2歳の子(亡X)が道路中央を歩き、それに正対して背面歩行する形で歩いていた親がいたところ、Y車が路外駐車場から出て、歩行者Xに衝突した。
裁判所の判断
過失割合 歩行者(X)5%:車(Y)95%
歩行者は、歩車道の区別のない道路においては、原則として、道路の右側端に寄って通行すべきものとされているところ、本件道路は、住宅地内に位置しており車両の通行量は多いとはいえないものの、本件事故現場付近では本件駐車場及び産婦人科医院の駐車場が本件道路に面して存在しており、これらに出入りする車両等が本件道路を通行することは充分予測が可能であるといえる(現に、亡Xの親らが二日にわたって行った調査によっても、本件事故が発生したのと同時間帯の午前9時過ぎの約35ないし36分間に、延べ6台の車両が本件道路に出入りしたことが確認されている。)。
したがって、亡Xの監督義務者である親としては、亡Xが未だ2歳であって、道路の側端を歩く等道路を安全に通行するための措置を自らとるだけの判断力がなく、また、周囲の車両の通行等に注意を払い、危難に際して咄嗟にこれを回避する行動をとることのできないことに鑑み、亡Xに本件道路の側端を歩行させる等の措置をとるべき注意義務があったと考えられるところ、亡Xの親は、注意義務を怠り、亡Xに本件道路中央付近を歩行させていた過失がある。
他方、Y車は、本件駐車場から発進して駐車場前の道路に進入し、右折進行するにあたり、本件駐車場出入口付近はその両脇にある植え込み等のため、道路左右の見通しが困難であったから、Y車を小刻みに進行させる等して前方左右を注視し、歩行者の有無及びその安全を確認して進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、左前方の電柱との安全確認に気を取られ、道路右方の安全を十分確認しないまま、時速約10ないし15㎞の速度で進行した過失により、Y車前方を同方向に歩行中の亡Xに気づかず、Y車前部を亡Xに衝突させた過失がある。
亡Xの親及びY車の各過失の内容及び態様を対比して本件事故における寄与度を勘案すると、亡Xの死亡による損害賠償額を算定するにあたっては、亡Xの親の過失を、過失割合5%の限度で控除する方法によって斟酌するのが、相当というべきである。
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