交通事故コラム

判例紹介(過失割合) 切り返しのために通路に出た車と駐車しようと後退していた車の衝突事故

監修:弁護士 西野智貴( 弁護士への相談はこちら ☞ お問い合わせ・無料相談予約 

東京高判平成11年3月31日

駐車場内にて、一旦駐車スペースに駐車したが、切り返しをしようと通路に出たX車と、後退して駐車スペースに駐車しようとしていたY車が衝突した事故について、過失割合を判断した裁判例をご紹介します。

事故態様

蛍光灯が少なく、薄暗く狭い駐車場内で、一度は18番に車庫入れを完了したX車が、駐車区画内での位置を正すため切り返しを行い、通路に出たところ、X車が車庫入れを完了したと思ったY車が、18番の向かい側の34番に後退して車を停めようとし、両車が衝突した。

裁判所の判断

過失割合 車(X)70%:車(Y)30%

X車は、自車を運転して一旦自己の駐車区画(18番)に入れたのであるから、切り返しなどを行うため再度中央通路に進出するに当たっては、同通路を走行する車両の進行を妨害することのないよう、車両の有無を確認するなど十分な注意を払う義務を負うものというべきところ、X車は、その確認を怠り、自車の切り返しを行うべく漫然と通路に進出した過失によって、通路中央付近を走行(後退)していたY車の進路を妨害しY車に衝突したものであるから、X車には、注意義務違反の過失があることは明らかである。

本件事故の状況によれば、Y車は後退を始めるに際して後方に車両のないことを一応確認してはいたが、X車の車庫内の様子はY車の方向からは厚いコンクリート壁のため十分に把握することはできない状況であった上、本件駐車場は比較的狭く暗かったのであるから、このような状況のもとで後退走行しようとするY車としては、先行していたX車の車庫入れが完全に終了したかどうかなどその動静を十分確認しながら同車との接触を回避するよう注意を払うべき義務があるというべきである。ところが、前記のとおり、Y車は、後退の途中からはX車の車庫方向への注視を怠り、その車庫入れが完全に終了したかどうかなど同車の動向に十分な注意を払うことを怠ったため、突然切り返しを行って通路に出て来たX車と衝突したのであるから、Y車にも注意義務違反の過失があると認められる。そして、本件事故の状況に徴すると、その過失割合は、上記のとおりとするのが相当である。

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