交通事故で怪我!休業損害や慰謝料を請求したい
〈質問〉人身傷害事故で慰謝料は請求できる?アルバイトを休んで収入が減った分は?
名古屋市内で交通事故に遭い、右足を骨折しました。けがの治療のため3か月通院し、無事完治しましたが、事故から1か月間、右足の痛みでまともに動くことができず、アルバイトを休まざるを得ませんでした。
事故の相手方に損害賠償請求したいと考えていますが、治療費のほかに、右足の痛みで苦しい気持ちだったことや、アルバイトを休んで収入が減った分は損害として請求できるのでしょうか?
〈回答〉慰謝料、休業損害として請求できます。
交通事故のお怪我で入通院された場合の代表的な損害としては、治療費、入院雑費、通院交通費、付添看護費、休業損害、傷害慰謝料などが挙げられます(なお、後遺症が残った場合については、別のコラムで解説します)。
痛みで苦しい気持ちは傷害慰謝料として、アルバイトを休んで収入が減ったことは休業損害として事故の相手方に請求できます。
〈弁護士による解説〉
治療費
交通事故で傷害を負った場合、医学上一般に認められた治療方法によって、傷害が治癒または症状が固定して後遺障害が確定するまでの間の治療費について、治療に必要かつ相当な範囲で、実費全額が損害として認められます。
必要かつ相当な範囲の治療であることは診断書が、治療費用の金額は診療報酬明細書が証拠資料となります。
なお、後遺障害が残る場合、症状固定後の治療費は原則として相手方に請求できませんので、いつの時点を症状固定として治療を終えるのかについて、医師としっかり相談する必要があります。
「施術費」については注意を要します。
接骨院で柔道整復の施術を受けたり、はり、きゅうなどの施術を受ける場合、それらは医師の資格を持たない方による施術ですので、治療の必要性や相当性が問題とされることがあります。
施術費は、治療上有効かつ相当と認められる場合で、原則としてその施術が必要である旨を医師が診断書や指示書に記載している場合、相当な範囲で損害として認められます。
入院雑費
入院すると、治療費のほかに、日用雑貨品の購入費用や栄養補給費、通信費、新聞代、テレビカード代などがかかります。
これらは相当性が認められる範囲で損害と認められますが、各々費目ごと個別に立証するのは大変ですから、裁判実務では、個別の立証を要せず、入院一日につき1500円が相当な入院雑費として認められています。
通院交通費
通院のために支出した交通費は損害として認められます。
電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合は、その金額が、自家用車を使用した場合は1㎞あたり15円で計算したガソリン代相当額や駐車場代の実費が損害として認められます。
なお、タクシー代については、症状などによりタクシー利用が相当と認められる場合以外は、公共交通機関の料金の限度で損害として認められます。例えば、軽い打撲の通院でタクシーを利用しても、タクシー代全額が損害として認められるわけではなく、電車やバス料金の限度で認められます。
付添看護費
被害者の方の受傷部位、程度、年齢、治療態様などを総合して、入通院中に付添看護が必要であれば、それに要した費用は損害として認められます。
医師の指示がある場合はもちろん、医師の指示がない場合でも、足の骨折などで一人で通院することが困難な場合や、被害者の方が小さいお子さんでご家族の付き添いが当然予定されているような場合など、社会通念上付き添いの必要性が認められれば、損害として認められます。
付添看護費の金額については、職業付添人を雇った場合には現実に支払った金額が損害として認められます。近親者が付き添った場合には、金額が定額化されており、入院の付き添いは1日6500円、通院の付き添いは1日3300円が損害として認められます(ただし、事情に応じて増額が考慮されることもあります。)。
休業損害
休業損害とは、交通事故で負った傷害の治療のために休業を余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害です。
休業損害は、傷害が治癒、または症状固定となるまでの間に被害者に生じた収入の減少であり、症状固定後に後遺障害で労働能力を喪失したために生じる収入の減少については、後遺障害による逸失利益という損害であり、休業損害とは別の損害として考えられています(逸失利益については別のコラムで解説します)。
休業期間は原則として「実休業日数」ですが、相当性が認められる範囲に限定されます。
減収分の損害を算定するにあたって基準となるのは、事故当時の労働の対価としての収入であり、現実の減収がなければ休業損害は認められません。無職の場合は原則として損害が無いことになります。
休業損害の詳細については、別のコラムで解説します。
傷害慰謝料
傷害慰謝料とは、治癒または症状固定までの間に、被害者が受傷したことで被った肉体的・精神的苦痛を慰謝するために支払われる金銭のことです。
慰謝料の金額は、傷害の内容や程度、治療の経過などの事情を総合的に考慮して判断されますが、裁判実務においては、入院・通院の期間に応じて、いわゆる「赤い本」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が編集・発行する「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」)の基準に従って算定されることが一般的です。
例えば、骨折など他覚所見のある軽度でない傷害で2か月間通院した場合には、赤い本の別表Ⅰより、52万円が傷害慰謝料の基準となります。
傷害慰謝料の詳細は、弁護士にご相談ください。
まとめ
交通事故でお怪我をされたときは、治療費はもちろん、入院や通院のために様々な支障(損害)が生じ、肉体的・精神的苦痛も決して小さいものではありません。
適正な損害額を計算するにあたっては、弁護士にご相談されることをお勧め致します。