交通事故コラム

判例紹介(過失割合) 駐車場に入ろうと左折していた車と道路を直進していたバイクの衝突事故

監修:弁護士 西野智貴( 弁護士への相談はこちら ☞ お問い合わせ・無料相談予約 

東京地判平成21年12月24日

駐車場に入ろうと左折していた車と道路を直進していたバイクの衝突事故について、過失割合を判断した裁判例をご紹介します。

事故態様

本件事故現場の道路は、片側1車線の国道463号線であり、時速40キロメートルに速度規制がされているほか、追い越しのための右側はみ出し通行禁止及び駐車禁止の規制がされている。西行車線は車道の幅は3.5メートルであり、外側線によって区分された路肩の幅は0.9メートルである。また、本件道路の南側には酒類を販売する「やまや」の店舗とその駐車場があり、これらと本件道路との間に設けられている歩道の幅は3.3メートルである。

X車は、本件道路の西行車線を走行していたが、道路が渋滞していたため、車両をゆっくりと走行させていた。やがて、「やまや」の駐車場に入るため、左ウインカーを点灯させた上、ミラーで後方を確認したが、車両等を認めなかったので、歩道の前で車両を停車させることなく左折進行させようとしたところ、X車の左側面に自動二輪車Yが衝突した。X車は、このとき初めて自動二輪車Yに気付いた。

他方、自動二輪車Yは、大きな音量で音楽をかけながら運転し、本件道路の西行車線を走行していた。自動二輪車Yは、渋滞のためゆっくり進行していた車列より速い時速約40キロメートルの速度で走行していたところ、X車が左ウインカーを点灯させていたのを見落とし、ブレーキランプが点灯したのを見てから制動の措置を開始したため、回避が間に合わず、左折進行してきたX車の左側面に自動二輪車Yを衝突させた。

裁判所の判断

過失割合 車(X)70%:自動二輪車(Y)30%

自動二輪車Yは、前方を注視し、前方の車両との車間距離を十分取って適切な運転操作をする義務があるにもかかわらず、X車の左ウインカーが点灯しているのを見落とすなど漫然とこれを怠った過失により、制動の措置が遅れ、本件事故を発生させたのであるから、X車に対し、民法709条に基づく損害賠償責任を負う。

一方、X車は、路外の駐車場に入る際、左方後方を確認の上二輪車等を巻き込まないか等を注意することはもちろん、車両を一時停止させて事故発生を防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、X車の左後方にいた自動二輪車Yの存在を見落とした過失により、X車を路外の駐車場へ進入させるために左折を開始して本件事故を発生させたのであるから、自動二輪車Yに対し、民法709条に基づく損害賠償責任を負う。

双方に本件事故発生につき過失が認められるので、その割合について検討する。本件事故の態様が、X車が左折進行している際にX車の左側面に自動二輪車Yが衝突したというものであること、X車の過失の内容がX車を左折させるに当たって左後方にいた自動二輪車Yに全く気付かなかったというものであること、他方、自動二輪車Yは、渋滞によってできた車列より速い速度で自動二輪車Yを走行させており、また、X車が左ウインカーを点灯させているにもかかわらずこれを見落としていることに照らすと、本件事故発生における過失割合は、X車70パーセント、自動二輪車Y30パーセントが相当であると認められる。

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