交通事故コラム

判例紹介(過失割合) 路外駐車場から進入した車と道路を走行していたバイクが衝突した事故

監修:弁護士 森戸尉之( 弁護士への相談はこちら ☞ お問い合わせ・無料相談予約 

東京地判平成23年11月30日

路外駐車場から道路に進入した車と、道路を走行していたバイクが衝突した事故について、過失割合を判断した裁判例をご紹介します。

事故態様

本件道路は、町谷原方面(南方)から成瀬街道方面(北方)に向かう、片側1車線の市道であり(車道幅員は4.6m)、道路両端には幅員3.4mの歩道が設置されている。本件道路の指定最高速度は時速40kmとされ、町谷原方面から南成瀬中西交差点(信号機による交通整理の行われている丁字路交差点。以下「本件交差点」という。)までは上り坂で、本件交差点から先は下り坂となっている。
本件交差点の北側出口から北方約30m先の本件道路西側には、道路に接して、間口約5.6mの駐車場(以下「本件駐車場」という。)がある。歩道上の植込み箇所に街路樹が植えられているため、本件駐車場から本件道路に進入するに当たり、左右の見とおしが悪い。

自動二輪車Xは、時速80km程度の速度で、町谷原方面から成瀬街道方面に本件道路を直進していたところ、本件交差点に設置された対面信号機の表示が青から黄に変わるのを停止線(この停止線は、本件交差点南側入口から7.7m南方に設置されている。)までの距離が36.6mの地点で認め、更に21m進んだ地点で対面信号表示がなお黄のままであることを確認し、その後、対面信号を見ずに走行を続けた。
Y車は、本件駐車場から本件道路に進入して町谷原方向に進行するに当たり、本件駐車場前に設置された歩道上でいったん停止し、自動二輪車Xの走行車線の反対車線(以下、単に「反対車線」という。)の信号機(本件交差点に設置されたもの)の表示を街路樹の隙間から確認し、さらに、車道に入る直前で本件道路の自動車の往来を確認した上で、前進して自動二輪車Xの走行車線に進入したところ、左方の反対車線から原付バイクが直進してくるのを認めた。
折から、自動二輪車Xは、本件交差点の出口付近で、路外左方から本件道路に進入してきたY車を約30m先に発見し、左方にハンドルを切りつつ急ブレーキをかけたものの間に合わず、本件道路の中央線付近において、自動二輪車Xの前部とY車の右後部とが衝突する本件事故が発生した。

裁判所の判断

過失割合 自動二輪車(X)50%:車(Y)50%

Y車は、本件駐車場から本件道路に進入するに当たって本件道路の往来に対し相応の注意を払ったということができる。しかし、本件駐車場の間口付近には街路樹が植えられていたほか、本件道路右方は上り坂となっており、Y車からは、右方の町谷原方面から進行してくる車両の往来が確認し辛い状況にあったこと、本件駐車場は本件交差点の自動二輪車Xの進行方向出口から比較的近い位置にあったこと、当時は真冬の早朝で、周囲は明るくなかったと推認できること等の諸事情に照らすと、路外施設から道路に進入しようとする自動車の運転者としては、本件道路に進入を開始してから走行車線での進行に入るまでの間、右方から走行してくる車両の存在を予測しつつ同車両との接触等を回避するよう安全な速度と方法で運転すべき注意義務があったというべきである。

しかるに、Y車は、本件道路に進入した後も、かなり遅い速度で自動二輪車Xの走行車線内を進行し、その間、左方から直進してきた原付バイクに気を取られ、右方の安全確認等が疎かになっていたと推認できる以上、上記注意義務を尽くしていたということはできない。したがって、本件事故の発生につき、Y車には過失があり、自動二輪車Xに対し、民法709条に基づく損害賠償責任を負うというべきである。

そして、本件事故の態様等に照らすと、路外施設から本件道路に進入しようとしたY車にも相応の過失があることは間違いないが、本件事故当時の状況下において40kmに及ぶ速度超過をしていた自動二輪車Xにも相当の落ち度があったといわざるを得ず、結局のところ、Y車と自動二輪車Xの過失割合は、50対50と見るのが相当である。

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