交通事故コラム

判例紹介(過失割合) 駐車場内通路で停止していた車にバックしてきた車が衝突した事故

監修:弁護士 森戸尉之( 弁護士への相談はこちら ☞ お問い合わせ・無料相談予約 

東京地判平成23年7月11日

駐車場内通路で、切り返しのため停止していた車にバックしてきた車が衝突した事故について、過失割合を判断した裁判例をご紹介します。

事故態様

本件駐車場の概況は北側が道路に面した南北約26.0m、東西約16.0mの駐車場であり、中央の通路を挟んで南北方向の駐車区画が通路の東側と西側に9台分ずつ設けられている。
本件事故が発生した午後4時45分ころ、本件駐車場付近は激しい雨が降っていた。X車は、通路東側にある駐車区画の北から4番目に、車両後部を通路側に向けて駐車していた。X車の両隣の駐車区画と通路を挟んだ向かいの駐車区画にも車両が止まっていた。他方、Y車は、通路の南端付近に、車体後部を北方に向けて駐車していた。
X車は、本件駐車場から出るため発進し、ライトを点灯させて真後ろに向けて後退した。出庫する際、Y車の方を確認したところ、Y車はライトが点灯しておらず止まった状態であった。
Y車は、ライトを点灯させて発進し、真後ろに向けて後退し、約4.5m後退した地点でバックモニターを見た後、後退を続け、更に約5.7m後退した地点で後方のX車に気付き、ブレーキを掛けたが、Y車の後部がX車右側面後部に衝突した。
X車は、衝突時、本件駐車場から出るために左に切り返しをしようとしていたが、豪雨で視界が悪く、また、駐車時のX車とその両隣の駐車車両との間隔が狭かったことなどから、左右や後方、左前方を目視することなどに時間が掛かり、後退によりその車体が通路を塞ぐ状態になった後、約10秒間、車を停止させていた。

裁判所の判断

過失割合 車(X)0%:車(Y)100%

Y車は、本件事故当時、後退しようとしていた通路の左右の駐車区画に車両が止まっており、かつ、激しい雨が降っていたのであるから、目視するなどして後方の安全を十分確認しながら後退すべき注意義務があるのにこれを怠り、バックモニターを見るなどしただけで後方の安全確認を十分せず、Y車後方で停止していたX車に衝突直前まで気付かないで後退し、本件事故を惹起した過失があると認められ、Y車は、民法709条に基づき、X車に生じた損害を賠償すべき責任があるというべきである。
他方、X車は、Y車が後退を開始する前に後退を始め、切り返しのため、約10秒、通路を塞ぐ状態で停止していたところ、後退を開始したY車から衝突されたものであるから、本件事故の原因は専らY車にあり、X車に過失相殺するほどの過失はないというべきである。

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