物損事故とは
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スーパーの駐車場に車を止め、買い物から戻ると、
隣の車がぶつかったそうで、
車のヘッドライトが壊れてしまっていたんです。 -
だれもお怪我はされなくて、不幸中の幸いでしたね。
でも大切なお車が損害を受けてしまったので、
「物損事故」にあたります。
交通事故は、大きく分けて「人身事故」と「物損事故」があります。「物損事故」とは、事故によって財産(物)に損害を与えた(受けた)場合の事故のことをいいます。 「人身事故」のように人の命や身体への損害に比べると大きな損害とはなりにくいですが、大切な財産を守る権利として保障されています。
物損事故による損害賠償請求
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ヘッドライトが点けられないと夜道を走るのも危険ですし、
早く修理したいのですが、車がないと通勤もできず、大変困ります。 -
そうですね、できるだけ早く修理しましょう。
車の修理費だけでなく、修理期間中の代車の利用も請求できます。
物損事故で請求できる損害賠償の種類
物損事故では次のような費用を損害賠償として請求することができます。
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修理費
修理費は基本的に全額請求できます。全額とは、事故によってできた損害の修理が必要で相当な場合にかかる費用のこと。
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買替差額
修理費が車両時価額に買替諸費用を加えた金額を上回る場合には、経済的全損となり、事故時の時価相当額と売却代金の差額が認められます。
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登録手続関係費
買替のために必要になった登録、車庫証明、廃車の手数料などの費用。
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評価損
修理しても直らない傷や機能の欠陥があったり、事故車のために商品価値が下がってしまった場合に請求が認められます。
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代車使用料
修理期間や買替期間中にレンタカーなどの代車を利用した場合の使用料。
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休車損
営業車や作業車などのように収益を生むために必要な車両が、修理や買替期間中に使用できず、利益を失ったり、外部委託することでかかった燃料費などの費用。
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雑費
事故の衝撃で走行不能となった車両のレッカー代金や車両の保管料、廃車にかかる費用。
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その他
車に積んでいた物が壊れた場合や、一緒に乗っていたペットが怪我をしたり、死んでしまった場合も治療費や時価額を請求できます。
自動車を修理する場合、相手の保険会社が修理工場を指定してくる場合がありますが、応じる必要はありません。
信頼できる修理工場に依頼し、きちんと修理してもらいましょう。
物損事故と慰謝料
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父から受け継いだ大切な車だったのでとてもショックです。
物損事故の場合も慰謝料を請求できますか? -
大切なお車が壊れてしまったら誰しも悲しいですよね。
でも、残念ながら慰謝料請求は原則認められていません。
慰謝料とは、交通事故により被害者が負った精神的苦痛に対する金銭的な補償のことです。
物損事故の場合、事故によって生じた被害が自動車や物品の破損にとどまるため、物損事故における慰謝料請求は、原則認められていません。ただし例外的に、家族同然にかわいがっていたペットの死傷や先祖代々が眠る墓の墓石など、被害者にとって精神的価値があるものが傷つけられたり、破壊された場合、これによって相当な精神的苦痛を考慮して慰謝料が認められる可能性があります。
物損事故を人身事故に切り替えるには
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事故に遭った当初は気持ちが動転していたのもあって
物損事故にしましたが、事故から2〜3日経つと首に痛みを
感じるようになりました。 -
それは大変です。むち打ちの可能性があります。
物損事故で処理された場合も人身事故に切り替えることが可能です。
物損事故はよほどの過失が認められない限り、行政処分(免許証の点数)、刑事処分(刑事罰)、⺠事処分(慰謝料や逸失利益)が問われないので、加害者側は物損事故で処理しようとしてきます。しかし少しでも体に違和感を感じるようでしたら、必ず病院で診察しましょう。事故直後は、特に怪我が見当たらなくても、数日後に痛みがあらわれることがあります。そういう場合には、物損事故から人身事故への切り替え手続きを行いましょう。
物損事故から人身事故に切り替える手順
病院で診察してもらう
まずは病院に行き、症状を診察してもらい、診断書を作成してもらいます。
警察に人身事故の届け出をする
事故後10日くらいまでの間に医師の診断書をもって届出をすると、物損事故として届け出てしまった事故も、
人身事故扱いに切り替えてもらえることができます。
事故から期間が空きすぎると、事故と傷害との関連性がはっきりせず、警察側が人身事故に切り替えに応じてくれなくなります。
したがって、痛みや違和感を感じたら、すぐに病院で診察を受け、診断書を書いてもらいましょう。