交通事故コラム

コンビニエンスストア駐車場での車同士の事故の過失割合

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〈質問〉コンビニエンスストアの駐車場内での車同士の事故の過失割合は?

先日、名古屋市内をドライブ中にコンビニエンスストアに立ち寄り、買い物を済ませて駐車場から出ようとして車を発進させたところ、同じく駐車場から出ようとしていた車と接触してしまいました。
その駐車場はコンビニから公道に向かって真ん中に通路があり、通路の左右に各々7台ほどの駐車スペースが設けられていました。私の車は駐車スペースを出て通路を公道に向かって前進していたところ、通路右側の駐車スペースに駐車していた相手の車がバックで通路に入ってきて、私の車の右側面と相手の車の後部が接触したのです。
私と相手の過失は何対何でしょうか?

〈回答〉過失割合1対9(裁判例)

質問に類似の事案で、質問者の過失割合が1、相手の過失割合が9と判断した裁判例があります。

〈弁護士による解説〉

駐車場内での交通事故の特殊性

駐車場内での交通事故については、その駐車場が道路交通法の「道路」(道路交通法1条、同2条1項1号)に該当するか否かが問題とされることがあります。
公道が道路交通法の「道路」に該当するのは当然ですが、私有地であっても、それが「一般交通の用に供するその他の場所」(道路交通法2条1項1号)に当たる場合には、道路交通法の規制を受けます。そして、「一般交通の用に供するその他の場所」に該当するか否かは、「不特定多数の者(車)が自由に通行できるか否か」で判断されます。
もっとも、駐車場内での交通事故の過失割合を判断するにあたっては、駐車場の特殊性を考慮する必要があります。
すなわち、駐車場は駐車を目的とする場所であり、車が後退したり方向転換することは勿論、駐車した車から人が降りてきたり、駐車された車と車の間を人が歩くなど、通常の道路では想定されていない車や人の動きがあることから、駐車場において車を運転する者に対しては、道路を走行する場合と比して、より高度な前方注視義務や徐行義務が課されているものと考えられます。
従って、駐車場内での事故の過失割合を判断するにあたっては、その駐車場が道路交通法の道路に該当するか否かに関わらず、高度の前方注視義務や徐行義務を前提として過失割合が判断されるものと考えられます。

具体的な検討

それでは、質問の事案で、①駐車場内の通路部分を前進して駐車場から出ようとする車と、②駐車場内の駐車スペースからバックで通路部分に侵入しようとする車との間の接触事故のケースでは、過失割合はどのようになるのでしょうか。
以下、質問の事案と類似する事案の裁判例として、東京地判平成24年12月11日(以下、「上記裁判例」といいます。)がありますので、同裁判例を参考に解説します。

結論から述べると、①よりも②の方が、より重い過失責任を負います。

順を追って説明しましょう。
先ず、①の注意義務について、通路を進行する車は、駐車場が車による通路の進行や駐車スペースと通路の出入りを当然に予定している場所であることから、駐車スペースから駐車していた車が通路に侵入してくることを予見すべきであり、駐車スペースから通路に進入する車との関係で、他の車の進行を予見して安全を確認しつつ、通路の状況に応じて他車との衝突を回避できるような方法と速度で通行する義務があると考えられます。
次に、②の注意義務について、駐車スペースから通路に進入する車は、通路への侵入を試みる段階では停止していることから、通路を進行する車よりも容易に安全確認をし、衝突を回避することができるうえに、通路に進入する際に、通路における他の車の進行を妨げることになることから、進入しようとする通路の安全を確認し、通路を進行する車の通行を妨げるおそれがある場合には、通路への進入を控える義務があると考えられます。
従って、①と②の過失割合は、「駐車区画から通路に進入する車の注意義務は、通路を進行する車より重い注意義務が課されているといえるから、事故が発生した場合には、原則として、駐車区画から通路に進入する車が、より重い過失責任を負う。」(上記裁判例を一部抜粋)と考えられます。
そして、具体的な過失割合について、上記裁判例は以下のとおり個別具体的な過失に言及のうえ、事故現場の状況や双方の車両の接触箇所及び接触状況、接触直前の回避行動などの運転状況等を総合的に考慮して、①の過失1割、②の過失9割と判断しました。

〈①側の過失〉
駐車スペースから車が進入してくることが予定された場所であり、②車が駐車されていたことが認識可能で、②車の後退進行が予見不可能であった事情は認められないこと、また通路の幅(8メートル以上)等踏まえれば、②車が後退発進する程度の速度で通路に進入したにも関わらず接触を回避できなかった①車の進行は、駐車スペースの車の通路への侵入可能性を予見した、十分な安全確認及び通路の状況に応じた衝突回避が可能な方法による通行義務が尽くされていたとまでは認められない。
〈②側の過失〉
駐車スペースから後退して発進する際、①の車が通路を進行していることを十分認識可能であったことから、①車の動向及び周囲の安全に注意して、進入を控えるなど、①車の通行を妨げないような方法で通路に進入して進行すべき義務があるのに、それを怠った。

まとめ

駐車場内での事故は、駐車場の特殊性を考慮して過失割合が判断されます。保険会社の担当者によっては、駐車場内での事故は道路交通法の適用がないから過失割合は5対5、というような発言をされる方もいらっしゃるようですが(実務において過失割合を判断する際に用いられる「別冊判例タイムズ」の全訂4版(旧版)まで「駐車場内の事故」の類型の記載がなかったことも影響しているのかもしれません)、そのようなことはありませんので注意が必要です。駐車場内での交通事故でお困りの際は、弁護士にご相談されることをお勧めします。