信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止義務
JAFによる調査 一時停止率全国平均は約2割
2020年10月16日、JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)が「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査(2020年調査結果)」を公表しました。
JAFが全国合計94か所(各都道府県2か所ずつ)で信号機の設置されていない横断歩道を通過する車両(9、434台)を対象に調査を行ったところ、歩行者が横断しようとしている場面で一時停止した車は21.3%しかおらず、約8割の車が一時停止することなく通過したという結果が出たそうです。一時停止率が最も高かった都道府県は長野県で一時停止率は72.4%、ワーストは宮城県の5.7%とのことです。ワーストの数字が低すぎる(宮城県は約20台に1台しか止まらない計算になります)のも気になりますが、一時停止率トップの長野県は2位の兵庫県57.1%に大差を付けており、長野県が突出して高い理由が大変気になるところです。長野県では幼少時から交通ルールの啓もう活動が盛んであるという話を聞きますので、小さい頃に受けた教育が、大人になってハンドルを握る側になっても、忘れられることなく身に付いているのかもしれませんね。
愛知県の一時停止率は32.5%
愛知県は2003年から16年連続交通事故死者数ワーストの不名誉な記録を持っていましたが、昨年千葉県にその座を譲り大きな話題となりました。今回のJAFの調査でも愛知県の一時停止率は32.5%で、同じ東海三県の岐阜19.7%や三重27.1%より高い一時停止率となっており、愛知県民の交通ルール順守への意識の高まりが伺われる調査結果となっています。
横断歩道を通過する車両の義務
横断しようとする歩行者がいるときは必ず一時停止
横断歩道に接近する車は、横断歩道を通過する際に、横断歩道によって道路を横断しようとする歩行者がいないことが明らかな場合を除いて、横断歩道の直前で停止することができるような速度で進行しなければならず、また、横断歩道で横断し、あるいは横断しようとしている歩行者がいる場合には、その横断歩道の直前で一時停止し、かつ歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません(道路交通法38条1項)。
違反者には罰則も
これに違反した場合、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金となります(道路交通法119条1項2号)。
過失割合
横断歩道の歩行者と車との事故が起きた場合、その過失割合はどうなるのでしょうか?
基本は 歩行者0 車100
上記のとおり、横断歩道を通過する車には重い注意義務が課されており、その反面、横断歩道によって道路を横断する歩行者に対しては強い法的保護が与えられていることからすれば、横断歩道上での歩行者と車の事故の過失割合は、「歩行者0:車100」が原則と考えられます。
修正要素 歩行者による車の直前での横断等は歩行者の過失増
もっとも、次のような場合には、車からは歩行者の発見が必ずしも容易でなく、歩行者からは横断前に左右の安全確認を行えば容易に事故を回避することができますから、歩行者側の過失が5~15%認められることがあります
〇車の直前での横断
〇渋滞車列の間の横断
〇駐停車車両の陰からの横断
〇夜間暗い場所での横断
〇幹線道路や交通頻繁な道路の横断
ただし、歩行者側に過失がある場合でも、車が減速しないで横断歩道に進入してきたときは、車に著しい過失があるものとして相対的に歩行者側の過失が減ります。
まとめ
横断歩道での歩行者と車の事故は、基本的に歩行者側に過失は認められず、車の側が事故によって発生した損害全てを負担することになります。JAFの最新の調査結果にも表れているとおり、ドライバーの側において、横断歩道の直前での一時停止義務や減速義務を順守する意識が未だ不足しているのが現状ですので、交通事故の加害者として重い責任を問われることのないように、ドライバーの皆さんには交通ルールの順守を徹底していただきたいと思います。また、横断歩道で事故に遭われた際には、一度弁護士にご相談ください。